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エビデンス・研究資料「皮膚のヒアルロン酸の合成と代謝メカニズム」20241209

【要約】
●ヒアルロン酸は、真皮と表皮で異なる役割を持ち、高分子と低分子でも作用が異なり、活発な合成と分解のバランスによって維持されている。

●光老化では、真皮ヒアルロン酸が減少し、HYBID遺伝子の発現上昇とHAS1・HAS2の発現低下がシワ形成に関与すると考えられている。

●加齢では、表皮ヒアルロン酸が減少し、細胞増殖や分化が低下して表皮の非薄化が起こるため、ヒアルロン酸の回復が老化症状改善や予防に効果的と考えられる。


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皮膚のヒアルロン酸の合成と代謝メカニズム

☆皮膚のヒアルロン酸について
ヒアルロン酸は1934年に牛の眼の硝子体から単離されたことから、「硝子体(hyaloid)に由来するウロン酸(uronic acid)」という意味で命名されました。
ヒアルロン酸はN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖が交互に結合した直鎖状のグリコサミノグリカンであり、その分子量は数百万にも及ぶ生体で最大の高分子の集まりです。皮膚には全身の約50%のヒアルロン酸が存在
していますが、真皮と表皮でそれぞれの役割をこなしています。
(PDF図版参照)

*真皮のヒアルロン酸*
水和ゲルとして他のマトリックス成分と相互作用をしながら組織の水分保持に関与するだけでなく、粘弾性にも寄与する。

*表皮のヒアルロン酸*
細胞間スペースに高濃度で存在し、血管の通わない重層した細胞同士の空間を維持し栄養素や代謝産物の拡散に寄与していると考えられている。
(PDF図版参照)

高分子のヒアルロン酸(分子量1000kDa以上)は血管新生を抑制し、抗炎症作用や免疫抑制作用があるのに対し、低分子のヒアルロン酸(分子量10kDa以下)は血管新生を促進し、炎症の亢進活性、免疫刺激能、抗アポトーシス活性を示すという、相反する作用を示すことがわかっています。

そしてヒアルロン酸の最大の特徴はその速い代謝活性にあり、代謝半減期は1日程度と驚くほど速いのです。
ヒアルロン酸は活発な合成と分解のバランスのもとに維持されていますが、この代謝回転を担うのが真皮では線維芽細胞、表皮では表皮細胞となります。

☆ヒアルロン酸の合成メカニズム
ヒアルロン酸はHASという合成を担うタンパク質によって作られます。
このHASの遺伝子はHAS1、HAS2、HAS3があり、生体内での発現パターンやその制御機構は全く異なります。

真皮線維芽細胞のヒアルロン酸合成を担うHAS遺伝子は主にHAS1とHAS2であり、表皮細胞のヒアルロン酸合成を担うHAS遺伝子はHAS3であることが明らかとなっています。

同じ皮膚内で同様にヒアルロン酸を合成しているにも関わらず、真皮と表皮の細胞では異なる遺伝子が機能しているのです。つまり真皮と表皮のヒアルロン酸合成を制御するためには、それぞれ異なるアプローチが必要になるということです。
(※具体的にどうすればこれらの遺伝子が活性化するかまではこの論文には記載されていません。)

☆ヒアルロン酸の分解メカニズム
真皮線維芽細胞はヒアルロン酸の分解活性を示すことがわかっており、今までは分解酵素であるヒアルロニダーゼによって分解されると考えられていました。

最近、真皮における生理的なヒアルロン酸分解において中心的な役割を担うのは「HYBID」という新規ヒアルロン酸分解酵素であることがわかっています。一方で、表皮細胞におけるヒアルロン酸分解メカニズムについては未だに十分な解明がされていません。(表皮細胞はヒアルロン酸分解活性を示さないことが研究の進展を阻む理由となっているようです。)

☆光老化と真皮ヒアルロン酸
光老化とは長期間紫外線に暴露された皮膚に生じる特徴的な変化を言い、皮膚表面ではシワの形成が観察され、皮膚の内部ではコラーゲン線維の減少などが引き起こされます。

真皮ヒアルロン酸とシワ形成についての関係性を調べてみたところ、顔面目尻のシワ部位(紫外線が長期暴露された部位)と紫外線にあまり曝されていない上腕内側部を比較したときに、シワ部位の真皮乳頭層のヒアルロン酸が顕著に減少していることがわかりました。

このときシワ部位のHYBID遺伝子の発現は上昇し(分解系の促進)、HAS1とHAS2の発現は低下(合成系の抑制)していたことから、これらがヒアルロン酸の減少に寄与していると考えられました。そして、HYBID遺伝子の発現がより高く、真皮乳頭層のヒアルロン酸量が減少している皮膚ほどシワが深いこともわかりました。

これらの知見から、光老化によるヒアルロン酸の合成と分解のアンバランスを正常化することがシワ形成抑制に有効であると考えられます。

☆自然老化と表皮ヒアルロン酸
表皮は、表皮細胞が絶えず増殖と分化を繰り返すターンオーバーによってその構造や機能が維持されています。

表皮のヒアルロン酸は年齢と共に減少することが知られており、加齢に伴う表皮の大きな変化としては、細胞増殖能の低下やそれに起因すると考えられる表皮の非薄化です。

培養ヒト皮膚モデルにおいて、ヒアルロン酸の合成を促進させたときと抑制させたときの細胞増殖について見た検討があります。ヒアルロン酸の合成を促進させた場合、基底層からの表皮細胞増殖促進と、有棘層から顆粒層への細胞分化促進が見られ、表皮重層化が促進されることがわかりました。

そしてヒアルロン酸の合成を抑制させると、基底層における細胞増殖の低下と、有棘層から顆粒層への細胞分化を低下させて表皮の非薄化が起こることがわかりました。これらの知見から、加齢に関連して減少する表皮のヒアルロン酸を回復するアプローチは、皮膚の老化症状改善や予防に効果的であると考えられます。

★総括★
ヒアルロン酸の合成や分解は表皮と真皮で異なるメカニズムであることが明らかとなってきており、真皮のヒアルロン酸の合成と分解のアンバランスがシワ形成に、そして表皮のヒアルロン酸減少が加齢に伴う皮膚の非薄化に関わっているということがわかっています。

参考資料:吉田浩之, 皮膚のヒアルロン酸代謝に基づく抗老化技術の開発, FRAGRANCE JOURNAL, 51(6), 28-33(2023)

製作日:2024.12.09
監修:株式会社UTP 研究室


エビデンス・研究資料
「皮膚のヒアルロン酸の合成と代謝メカニズム」PDF

詳しくは、PDFをご参照ください。


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