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エビデンス・研究資料「皮膚のヒアルロン酸:各種病態との関連」20241129

【要約】
●ヒアルロン酸は皮膚の恒常性を維持する重要な成分であり、皮膚の発生、増殖、分化、再生、抗加齢などを制御している。

●胎仔創傷治癒機構では皮膚のヒアルロン酸が長期間高濃度に維持され、瘢痕を残さず完全に再生する理由の1つと考えられている。

●ヒアルロン酸は悪性腫瘍の増殖と転移を促進する危険因子でもあり、皮膚の恒常性維持と悪性腫瘍の両方に関連した成分である。


※エビデンスを最優先に考えるUTPでは、医学論文や研究資料、学術情報などをもとに、美容と健康に関する信頼性の高い情報をご紹介しています。掲載内容は研究・文献に基づく情報であり、商品開発や情報提供の参考資料として活用しています。


皮膚のヒアルロン酸:各種病態との関連

☆皮膚とヒアルロン酸
ヒアルロン酸は皮膚の発生、増殖、分化、再生、抗加齢などを制御し、皮膚の恒常性を維持する上で非常に重要な成分です。

その一方で、実は皮膚の悪性腫瘍の増殖や転移を促進する危険因子でもあることがわかっています。そのため、生体内におけるヒアルロン酸の発現を自在に制御することが可能になれば、皮膚そして全身の健康を長く維持できると考えられています。

皮膚には生体に存在する全ヒアルロン酸の50%以上が存在しています。ヒアルロン酸を生合成する代表的な細胞は、表皮の角化細胞、メラニン産生細胞であるメラノサイト、そして真皮の線維芽細胞になります。

☆ヒアルロン酸と胎仔創傷治癒機構
哺乳類動物の成獣では肝臓などの例外はありますが、臓器が傷つくと決して再生はされません。これは皮膚も同様で、真皮レベルを超える深い傷を負うと瘢痕を残して治癒することになります。
これを成獣創傷治癒機構と言います。
(PDF図版参照)

瘢痕の部分ではコラーゲン線維が増生し、しかも不規則に配列して線維化します。また弾性線維であるエラスチンは減少または消失してしまいます。そのため皮膚は弾力性に乏しく硬くなり、正常な機能が失われてしまうのです。

一方、哺乳類動物の胎生期には皮膚が完全に再生できる胎仔創傷治癒機構というものが存在します。
この機構では皮膚がひどく傷ついても瘢痕を全く残さず完全に再生されます。
ラットでは胎生16日まで胎仔創傷治癒機構が存在するため瘢痕が形成されず、18日以降になると機構がなくなり瘢痕を形成するようになります。サルでは胎生75日では瘢痕を形成せず、85日以降では瘢痕を形成することがわかっています。

この胎仔創傷治癒機構は、成獣創傷治癒機構と比較して皮膚のヒアルロン酸が長期間にわたり高濃度に維持されることが特徴で、これが瘢痕を形成しない理由の1つと考えられています。

実際、ラット胎仔の皮膚に傷を形成するとヒアルロン酸は成獣よりも素早く且つ過剰に生成され、しかも分解は遅いそうです。他にも、傷ついた皮膚にヒアルロン酸分解酵素を投与してヒアルロン酸含量を低下させると瘢痕の形成が著明になることがわかっています。

しかし、未だにヒアルロン酸による胎仔創傷治癒機構の詳細はわかっていないため、このメカニズムが解明されれば瘢痕を残さない皮膚の再生医療が可能になると考えられています。

☆ヒアルロン酸と皮膚悪性腫瘍との関係
ヒアルロン酸は悪性腫瘍の増殖と転移を促進する危険因子と言われています。
ヒアルロン酸とヒアルロン酸レセプター(受容体)であるCD44は悪性腫瘍で発現が亢進する場合が多く、これらが増殖と転移に大きく関わると言われています。ヒアルロン酸はグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンが結合した構造を取っていて、4-メチルウンベリフェロン(MU)という物質はこの結合を阻害することでヒアルロン酸の生成を阻害します。
(PDF図版参照)

マウスの皮膚に対しては悪性腫瘍である癌細胞をMUで処理すると細胞表面にあるヒアルロン酸の層(ヒアルロン酸リッチマトリックス(写真の淵の白い部分))が消失し、ここから細胞外マトリックスに遊離するヒアルロン酸の量も減少します。
(PDF図版参照)

ヒアルロン酸が減少した細胞は培養皿への接着能が低下し、細胞の遊走能も低下することがわかっています。

マウスにMUで処理した癌細胞と処理してないものをそれぞれ静脈内投与すると、未処理の場合では肝臓や肺に高確率で転移しているのに対し、処理した細胞は転移が顕著に抑制されていたそうです。そのためMUが新規の抗がん剤に成り得る可能性があると言われています。
(PDF図版参照)

※この知識は癌という点ではマイナスに捉えられますが、逆に考えるとヒアルロン酸は正常な細胞においては細胞の接着機能に関わるということです。表皮ではバリア機能にも関わると考えることができます。

★総括★
ヒアルロン酸は皮膚の恒常性を維持する重要な成分であると同時に悪性腫瘍との関連も持った成分です。

参考文献:Kon Atsushi, Hyaluronan in the skin and its correlation with dermatopathology. Trends in Glycoscience and Glycotechnology, 22(124) : 68-79, 2010

製作日:2024.11.29
監修:株式会社UTP 研究室


エビデンス・研究資料
「皮膚のヒアルロン酸:各種病態との関連」PDF

詳しくは、PDFをご参照ください。


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