【この記事で学べること】
●第36回日本プラセンタ医学会で発表された最新研究を報告。
●エクソソームを含む培養上清液への注意点と、認知機能に関するペプチド研究を紹介。
●プラセンタとユビキチン・プロテアソーム系の関係にも注目。
岡山県で開催された一般財団法人 日本プラセンタ医学会「第36回 日本プラセンタ医学会大会」の報告です。
(記事作成日時:2025年11月10日)
今回は、
・ドクターの方々による症例発表
・大学教授の方々による招待講演
・研究者の方々による基礎研究発表
など、非常に盛りだくさんの内容でした。
僕は「第1回大会」から皆勤賞なので、すべての講演内容を聞いていますが、今回は過去35回の中でも「最も素晴らしい内容」だったと思います!
そこで今回は、特に僕がお伝えしたい内容を抜粋して、皆様にも共有させていただきます。
※本記事は、学会で発表された研究内容や講演者の見解を、筆者の感想を交えて紹介するものです。特定の商品・施術による疾病の予防・診断・治療や、人に対する効果を示すものではありません。
✔ エクソソームの注意点
まずは、東京医科大学 医学総合研究所の特任教授「落谷孝広」先生の講演内容から。
落谷先生は、日本における「エクソソーム研究の第一人者」です!
エクソソームのメカニズムから、今後の医療への展開まで詳しくお話しされていましたが、なかでも声のボリュームが大きくなったのは、「エクソソームを含む培養上清液を安易に扱わないでほしい」という注意喚起でした。
◆ 培養上清液とは?
シャーレというお皿に培養液を入れ、そこで細胞を育てます。
その過程で、細胞はエクソソームを含む細胞外小胞や、さまざまな成分を培養液中へ放出します。そして細胞そのものを取り除いたあとに残る液体が「培養上清液」です。
※培養上清液そのものがエクソソームというわけではありません。培養上清液には、エクソソームを含む細胞外小胞のほか、可溶性タンパク質など複数の成分が含まれます。含まれる成分や品質は、細胞の種類、培養条件、精製方法などによって異なります。
この培養上清液は、美容や医療の分野で注目され、点滴に用いられたり、化粧品に配合されたりする例も見られます。
(皆さんも一度は耳にしたことがあると思います)
そもそもエクソソームとは、細胞から細胞へ情報を伝える細胞外小胞の一種です。
ただし、エクソソームは、いつでも細胞にとって「良い情報」だけを運ぶとは限りません。由来する細胞の状態などによって、含まれる情報や働きは異なります。
ここを「良い情報だけを届けるもの」と捉えてしまうのは注意が必要だと、落谷先生は強く警告されていました。

さらに、培養上清液には目的とする成分以外の物質が含まれる可能性もあるため、品質管理や安全性を十分に確認しないまま体内へ入れることに対して、かなり厳しいお話をされていました。
(ここではオブラートに包んでいますが、講演では、ものすごく強い言葉で注意を促されていました)
だからこそ、培養上清液を扱う場合は、その由来、製造工程、精製方法、品質管理、安全性に関する情報を、きちんと確認する必要があると思います。
(もちろん、化粧品に配合する場合もです)
※本項は、学会講演の内容を筆者が要約したものです。すべての培養上清液や、それを扱う事業者の安全性を一律に評価するものではありません。
✔ プラセンタと認知機能
この研究は、富山大学 和漢医薬学総合研究所 神経機能学領域教授の「東田千尋」先生によるものです。
今後のプラセンタのメカニズム解明につながる可能性を感じた発表で、非常に興味深かったです!
東田先生は、認知機能に関わる新しい研究対象を探す中で、生薬や漢方を研究し、プラセンタに含まれるペプチドへたどり着いたとのことでした。
研究では、培養神経細胞とアルツハイマー病モデルマウスを用いて、プラセンタ由来の特定ペプチドが、神経突起や樹状突起、記憶機能に関する評価項目へどのような影響を与えるかが検討されました。
神経細胞の形態やモデルマウスの記憶機能に関する結果は、とても印象的でした。
※ここで紹介しているのは、培養細胞およびモデルマウスを用いた基礎研究です。人におけるアルツハイマー病の予防・治療効果や、記憶力への効果を確認した研究ではありません。また、市販のプラセンタ製品の効果を示すものでもありません。
さらに東田先生は、プラセンタに含まれている「どの成分」が、この研究結果に関わっているのかまで調べていました。
今までは、プラセンタに含まれる成分の働きに「ペプチド」が関係していると考えられてきました。
しかし、ペプチドは、アミノ酸の組み合わせや順番、種類によって膨大な数になります。そのため、「どのペプチド」が働いているのかまでは、十分に分かっていませんでした。
ところが東田先生は、その候補となる特定のペプチドまで絞り込んだのです。
(科学の力はすごいです!)
具体的には、「GPPGPAG(グリシン・プロリン・プロリン・グリシン・プロリン・アラニン・グリシン)」という、7つのアミノ酸からなるペプチドです。
研究では、このペプチドについて、アルツハイマー病に関連する培養細胞とモデルマウスを用いて作用が検討されました。
プラセンタという多くの成分を含む素材から、研究対象を特定のペプチドにまで絞っている。
ここが、僕にはとても面白く感じられました。
今後、プラセンタに含まれるさまざまなペプチドの研究が進めば、「どのペプチドが、どのような生理作用に関わるのか」が少しずつ明らかになり、プラセンタのメカニズム解明につながっていくかもしれません。
※特定のペプチドを用いた基礎研究の結果を、プラセンタ原料全般、市販製品、または人への作用にそのまま当てはめることはできません。
✔ プラセンタとユビキチン・プロテアソーム
個人的には、この内容が一番面白かったです!
でも、「ユビキチン・プロテアソームって何?」という感じですよね……。
ユビキチン・プロテアソーム系とは、細胞内で不要になったタンパク質を分解する仕組みの一つです。
ものすごく簡単に言うと、不要になったタンパク質に「ユビキチン」という目印のシールを貼り、その目印が付いたタンパク質を「プロテアソーム」が分解します。
※ユビキチン=分解する対象に付けられる目印
※プロテアソーム=目印が付いたタンパク質を分解する複合体
この仕組みの解明に貢献した研究者たちは、2004年にノーベル化学賞を受賞しています。
一方、オートファジーも細胞内の成分を分解する仕組みです。
どちらも、分かりやすく言えば「細胞内のリサイクル機能」に関わっていますが、分解する対象や仕組みは異なり、同じ働きではありません。
※「小さいゴミはユビキチン・プロテアソーム、大きいゴミはオートファジー」という説明は、イメージをつかむための簡略化です。実際の仕組みはより複雑で、両者は単純に大きさだけで分けられるものではありません。
今回紹介された研究では、特定の馬胎盤抽出物を用いたマウス由来メラノーマ細胞の実験で、チロシナーゼなどのユビキチン化と、プロテアソームによる分解との関係が検討されました。
つまり、特定の実験条件では、馬胎盤抽出物とユビキチン・プロテアソーム系との関係が示唆されたのです!
これは、プラセンタのメカニズムを考えるうえで、とても興味深い結果だと思います。
※本研究は培養細胞を用いた基礎研究です。すべてのプラセンタ原料・製品に同じ作用があることや、人の皮膚・身体で同様の変化が起こることを示すものではありません。
さらに、ここからは僕の個人的な疑問です。
ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジーは、どちらも細胞内の分解機構に関わっています。では、プラセンタとオートファジーの間にも、何らかの関係があるのでしょうか?
今回の研究だけでは、そこまでは分かりません。
でも、プラセンタとオートファジーの両方に取り組んできたUTPとしては、今後の研究がとても楽しみです!
※オートファジーへの作用は、今回紹介した研究で確認された結果ではありません。「プラセンタがオートファジーを活性化する」と結論付けることはできません。
今回は、第36回 日本プラセンタ医学会大会で発表された内容の中から、僕が特に重要だと感じたものをピックアップしてお伝えしました。
研究は、分からなかったことが少しずつ見えるようになるから面白い。
これからも新しい研究に注目しながら、皆様と一緒にプラセンタへの理解を深め、広めていければうれしいです!
※本記事は学術情報の紹介を目的としたものであり、特定の商品・施術の有効性や安全性を保証するものではありません。基礎研究の結果は、人や市販製品にそのまま当てはまるものではありません。
作成日:2025.11.10
Profile:宮田哲朗
株式会社UTP社長/2,000件以上のクリニックやエステティックサロンと接した経験から得た知識を基に化粧品やサプリメントのオリジナル商品を多数プロデュース、数々のヒット商品を手掛ける。医療業界、美容業界に化粧品やサプリメントの正しい知識や選び方などを題材とした講演活動を全国で行う。著書に、「プロのための美肌メソッド」(アートデイズ社)「美肌作りの3分ルール」(ダイヤモンド社)
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